有責配偶者とは、離婚原因となる婚姻関係を破綻させる行為をした配偶者のことをいいます。
詳しい解説
1.有責配偶者とは、民法770条1項1号ないし3号、5号に定められた離婚原因にあたる事実、婚姻関係を破綻させる行為をした配偶者、婚姻関係の破綻に帰責性のある配偶者をいいます。
離婚原因にあたる事実とは、具体的には、次のようなものをいいます。
・不貞行為(同項1号:肉体関係を伴う浮気・不倫)
・悪意の遺棄(同項2号:扶養が必要な相手を置いて別居を開始し、生活費を渡さないなど)
・3年以上の生死不明(同項3号:事故や災害に乗じて故意に行方をくらまし、その後、3年以上生死不明の状態を維持したなど)
・その他婚姻を継続し難い重大な事由(同項4号:家庭内暴力・DVにより相手に傷害を負わせたなど)
2.有責配偶者からの離婚請求
自ら婚姻関係を破綻させながら、相手に離婚を求める行為は、信義に反する行為であるため、有責配偶者からの離婚請求を認めてよいかは、争いのあるところです。
この点について、裁判所は、有責配偶者からの離婚請求を、原則として認めていません(昭和27年2月19日最高裁判決)。
例外的に、①別居期間が長期に及んでいること、②未成熟子がいないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に過酷な状況に置かれないこと等、著しく社会正義に反する特段の事情が存在しない場合に、有責配偶者からの離婚請求を認めています(昭和30年11月24日最高裁判決)。
なお、協議離婚や調停離婚は、話し合い・合意による離婚であるため、有責配偶者からの離婚の申し出であっても、相手配偶者が離婚に合意する限り、離婚は認められます。
3.有責配偶者に対する慰謝料請求
相手方の有責行為により、離婚に至った場合、有責配偶者に対して、離婚の慰謝料を請求することができます。
また、有責行為自体が不法行為となる場合、不法行為に基づく損害賠償請求をすることも可能です。
関連条文
民法 770条
関連用語 離婚問題 不貞行為 慰謝料