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簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ20 債務引受と契約上の地位の移転・後編~

今回は、簡単・分かりやすい民法改正解説シリーズの第20弾です。

 

前回は、債務引き受けと契約上の地位の移転の前編として、債務引受の基本と併存的債務引受の改正・新規定について、説明・解説しました。

(前回のコラムはこちら:簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ19 債務引受(併存的債務引受)と契約上の地位の移転・前編~

今回は、後編として、免責的債務引き受けと契約上の地位の移転についての改正・新規定を、説明・解説していきます。

 

免責的債務引受

(1)要件

① ABD三者間合意(三面契約)
この場合にはやはり問題なく認められます。

② AD間の合意+Bへの通知
AD間の合意のみで免責的債務引受の契約は成立しますが、債務を免れることになるBに対してAが通知をしなければ効力を生じません(改正案472条2項)。
免責的債務引受は、通常はBにとって利益になると思われますが、自分のまったくあずかり知らぬところで債務が消滅するというのは不自然ですし、予期せぬ効果が発生しないとも限りません。
そこで、免責的債務引受契約が成立したことをBに通知することが要件に加えられました。

③ BD間の合意+Aの承諾
冒頭の例で見たように、Aが関与しないまま債務者が交替してしまうことはAの利益を害します。そこで、BD間の合意だけでも契約は成立しますが、Aの承諾がなければ効力を生じないこととしました(改正案472条3項)。
効力が発生するのはAの承諾を得た時点であり、契約時にさかのぼることはありません。

(2)効果

① 基本効果
免責的債務引受では、DがそれまでのBと同じ内容の債務を負い、Bは債務を免れます(改正案472条1項)。

② 抗弁
抗弁については、相殺以外は併存的債務引受と同じです。相殺に関しては、BD間に連帯債務の関係もない結果、DがBの有していた反対債権を理由に履行を拒むことはできません。

③ 求償
免責的債務引受では、引受後にDがAに弁済を行っても、Bに対して求償はできません(改正案472条の3)。
Bとしては債権債務関係から完全に解放されると考えるのが合理的な期待であり、この期待を保護すべきだからです。

④ 担保
たとえば、BがAに対する債務を担保するため自分の不動産に抵当権を設定していた場合、免責的債務引受で債務者がDに交替する際、Bの債務は消滅するのでそのままでは抵当権も消滅します(付従性)。
新たに抵当権を設定し直すとしても、その順位を維持できなければAにとって不利益です。そこで、このような場合には、免責的債務引受と同時またはそれ以前に、AがDに対して担保移転の意思表示をすることで、抵当権等の担保を順位を保ったままDの債務の担保として移転することができることにしました(改正案472条の4第1項本文、2項)。
ただし、担保権を設定したのがDでない限り、担保権設定者の承諾が必要です(同条1項ただし書)。この例では、Bの承諾は必要になります。
同じように、人的担保である保証人も、保証債務移転の意思表示をしてDに引き継ぐことができます(同条3項)。
ただし、保証人保護のために保証契約に書面要件が課されていることと合わせて、保証債務移転に対する承諾は書面でしなければなりません(同条4項、5項)。

 

契約上の地位の移転

契約上の地位の移転は、契約から発生する個々の債権債務を債権譲渡・債務引受により第三者に移転させるだけでなく、契約そのものについての取消権・解除権を含めた契約当事者の地位を丸ごと承継させるものとして独自の意義を認められ、実務上活用されています。
たとえば、事業承継に伴って継続的な売買契約を引き継ぐ場合、不動産譲渡に伴って賃貸借契約の賃貸人の地位を引き継ぐ場合に有用とされています。

(1) 要件

要件は、契約の当事者の一方(譲渡人)と第三者(譲受人)が契約上の地位を譲渡する旨の合意をし、契約の相手方が承諾することです(改正案539条の2)。
もっとも判例によれば、不動産譲渡に伴って賃貸人の地位が移転する場合については、相手方(賃借人)の承諾は不要とされます。
これについては賃貸借のところに規定が設けられました(改正案605条の2)。

契約上の地位の移転には他にもこのような例外がありうると考えられていますが、判例はなく、明確な基準を設けることが難しい状況です。
そこで、例外について一般的な形で明文化はされず、解釈に委ねられることになりました。

(2) 効果

効果は、契約上の地位の承継です。すべての債権債務の移転と、取消権・解除権の移転を含みます。

 

終わりに

以上、前回の前編と含めて、これまでの民法には規定のなかった債務引き受けと契約上の地位の移転について、説明・解説してきました。
これらは、新たな規定とはいえ、従来の判例や解釈を分かりやすく明文化する方向での改正ということもあり、比較的分かりやすい内容だったのではないでしょうか。

 

債務引き受けや契約上の地位の移転に伴うトラブル等については、名古屋駅前(愛知・岐阜・三重に対応)の弁護士法人中部法律事務所まで、ご相談ください。

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