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簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ17 債権譲渡③将来債権の譲渡~

今回は、簡単・分かりやすい民法改正解説シリーズの第17弾です。

 

今回は、債権譲渡に関する改正の第3回です。

今回の民法改正では、現行の民法には全く規定のない、将来債権に関する譲渡の規定が新設されます。
この新規定について詳しく説明・解説しつつ、改正・変更されなかった債権譲渡の対抗要件についても見ていきます。

(第1回コラムはこちら:簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ15 債権譲渡①改正の概観・譲渡制限特約~

(第2回コラムはこちら:簡単・分かりやすい民法改正解説~シリーズ16 債権譲渡②譲渡制限特約に関連する改正~

 

将来債権の譲渡性

事業や継続的取引から反復的に発生する債権がある場合、将来発生する予定の債権を(しばしばまとめて)他人に譲渡することがあります。
このような取引は、実務上、主に担保目的で広く行われており、判例も将来債権が譲渡可能であることを認めています
しかし、これについて、現状、民法の規定がありませんでした。
そこで、改正案466条の6第1項がまずこのことを明言しました。
続いて、譲渡後に発生した将来債権は、当然に譲受人が取得するというこれも判例が認めていたルールを、同条2項で明文化しました。

なお、対抗要件については後述しますが、将来債権譲渡についても通常と同様の方法で対抗要件具備が可能です(改正案467条1項)。
民法467条の通知・承諾のほか、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(以下、「特例法」)に基づき登記をすることによっても、第三者対抗要件具備の効果が生じます。
将来債権については、現状、後者がよく活用されています。
たとえば、事業者Aが法人Bから貸付けを受ける際、取引先Cに対して将来発生する複数の債権を担保としてBに譲渡するケースでは、譲渡の時点ではCに知らせないため登記の形で第三者対抗要件を具備し、取立ても当面はAが任されて行いますが、Aに債務不履行等の事情が生じれば、担保権の実行として、Bは、登記事項証明書とともにCに通知をし(特例法4条2項)、以後Cから直接取り立てる、といった方法が用いられています。

 

将来債権譲渡と譲渡制限特約

将来債権の具体的内容は、個々の債権が発生した時に定まる部分が多いものですが、譲渡の事実をまだ知らないことも多い債務者との関係で、譲渡人がその内容を完全にコントロールできるものでもありません。
そこで、譲渡された債権が実際に発生した時に、譲渡制限特約が付けられてしまうことも考えらえます。
この場合のルールは明確でなかったので、改正案466条の6第3項で規律を設けました。その内容は次のとおりです。
① 将来債権譲渡について債務者対抗要件が具備されるより前に譲渡制限特約が付けられた場合、譲受人に対して常に履行の拒絶ができる。
② 将来債権譲渡について債務者対抗要件が具備された後に譲渡制限特約が付けられた場合、譲受人に対して履行の拒絶はできない。

このうち②の内容は明文にありませんが、譲受人は譲渡時点では譲渡制限特約について常に善意となるため当然であり、既定の必要はないと考えられたためです。
①と②を債務者対抗要件具備の時点で分けるのは、それが債務者にとって譲渡の事実を知る時であることが多く、債権を回収できるはずだった譲受人の利益と弁済の相手方を固定したかった債務者の利益とを調整するうえで最もバランスが良いからです。

 

対抗要件(旧467条関係)

(1)対抗要件とは

対抗要件とは法律行為の効果を主張するための要件をいいます。
債権譲渡の場合、債務者に対する対抗要件とそれ以外の第三者に対する対抗要件とでは全く意味が異なります。
債務者に対抗するとは、すなわち履行を請求できることです(そのため「権利行使要件」とも呼ばれます。)。
これに対し、第三者に対抗するとは、債権が二重に譲渡された場合等に、他の譲受人等との関係で優先できることです。

現行民法では、債務者に対する対抗要件を、譲渡人からの通知または債務者の承諾とし(現行民法467条1項)、第三者に対する対抗要件を、確定日付のある証書によってした譲渡人からの通知または債務者の承諾と定めています(現行民法467条2項)。

(2)対抗要件制度は変更なし

今回の改正で、この対抗要件制度は変更されませんでした。
しかし、これは審議に携わった方々にとっては苦渋の決断だったのではないかと想像します。
というのも、現行の対抗要件制度にはいろいろな問題が指摘されているうえ、上述の特例法との二元的な制度になってしまったせいでややこしくなっている面があるため、改正が必須と考えられ、何種類もの革新的な案が細部にわたって検討されたのですが、現状を大きく変更することから生ずる不都合が回避しきれず、やむなく断念されていった経緯が法制審議会の部会資料に表れているからです。
改正の難しさを実感させられます。
ともあれ、対抗要件制度に変更はなかったので、従来どおり第三者対抗要件は確定日付のある通知・承諾、債務者対抗要件は通知・承諾であり、別途特例法により登記を利用した対抗要件制度が用意されているという形になります。

なお、債権譲渡のマイナーチェンジとして「指名債権」という用語はやめることになり、単に「債権」とされることになりました。

 

終わりに

今回は、新たに規定される将来債権譲渡について、詳しく解説・説明しました。

次回は、債権譲渡の最終回、「債務者の異議をとどめない承諾」(無留保承諾とも呼ばれます)の廃止について、詳しく見ていきたいと思います。

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