老後の生活基盤となるよう年金を納めている、年金を受給中である-そんな方が自己破産すると、年金にはどのような影響が出るのでしょうか?
ここでは、自己破産の年金への影響を考えてみます。
年金の種類
自己破産の年金への影響を考えるために、簡単ですが、年金とは何かを知りましょう。
年金には、大きく分けて、国が運営し、国民に加入が義務付けられている公的年金と、それ以外の私的年金があります。そして、私的年金には、企業が独自に設ける企業年金と、個人が個々に加入・管理する個人年金があります。
①公的年金:国民年金・厚生年金・共済年金があり、国が運営・支給しています。
②企業年金:確定給付企業年金・確定拠出年金・厚生年金基金などがあり、企業年金制度を導入している企業では、退職金の一部又は全部を年金で受け取ることができます。
③個人年金:各個人が、老後の生活に備えて、保険会社等との契約により、保険料等を積立て、年金を受け取ることができます。
自己破産の公的年金に対する影響
自己破産しても、公的年金には基本的に影響はありません。
年金受給前に自己破産して、将来の年金が受け取れなくなるということはありません。年金受給中に自己破産して、年金受給が停止されることもありません。公的年金は、差押禁止財産であり、差押えられることもありません。
なお、公的年金の支払い義務も自己破産による影響を受けません(免責されません)。
自己破産の企業年金に対する影響
確定給付企業年金や確定拠出年金を、退職金制度に代えて導入している企業もあります。自己破産への影響を考える上では、企業が退職金制度を導入しているか、企業年金制度を導入しているか、大きな違いが出ることになります。
自己破産しても、企業年金にも基本的に影響はありません。
確定給付企業年金・確定拠出年金・厚生年金基金のいずれも、差押禁止財産とされています。年金受給前に自己破産して、将来の年金が受け取れなくなるということはありませんし、年金受給中に自己破産して、年金受給が停止されることもありません。
これに対して、退職金の場合、退職金受領前であれば、退職金試算額の8分の1相当を財産として評価します。この金額が自由財産として認められなければ(99万円を超える場合は)、自由財産として認められなかった分(99万円を超える分)を破産財産として裁判所に拠出する必要があります。退職金を受領済みの場合は、現金や預金として扱われ、自由財産として認められなかった分(99万円を超える分)を破産財産として裁判所に拠出する必要があります。
自己破産の個人年金に対する影響
公的年金・企業年金が自己破産の影響を基本的に受けないのに対して、個人年金は、自己破産による影響を受けます。
上でも述べましたが、個人年金は、個人が、保険会社等との契約により、保険料等を積立てて受け取る年金であり、自己破産では、保険と同様、資産とみられます。
具体的には、解約返戻金が資産とみなされます。解約返戻金が高額になる場合、解約を検討する必要があります。
⇒詳しくは、自己破産の生命保険への影響へ。
公的年金や企業年金は、自己破産によって影響は受けませんが、個人年金は、保険と同様に資産と扱われ、自己破産による影響を受けることになります。
個人年金を契約・受給中の方で自己破産を検討されている方は、保険証券や解約返戻金を調査の上、一度弁護士に相談してみてください。