住宅ローンの返済が困難・回らないために自己破産する場合、住宅を手放す、つまり、生活基盤の変更を余儀なくされます。そうであるならば、できるだけスムーズに新生活をスタートさせたいですよね。
ここでは、住宅ローンの残った住宅を抱えて自己破産する場合の一番良い方法を考えてみましょう。
実はあまり影響ない?~不動産の売却方法・売却時期~
自己破産をする場合、所有している不動産は処分(売却)しなければなりません。
不動産の売り主は、一般的には、できるだけ高く不動産を売りたいと思うでしょう。
しかし、実は、自己破産する場合、不動産が高く売れても売れなくても、本人にはあまり影響はありません。なぜなら、住宅ローンが支払えず破産するケースでは、オーバーローン(住宅ローンの残額が、住宅の価値を上回っている状態)になっているのが一般的だからです。このような場合、不動産の売却代金はすべてローンの支払いに充てられてしまい、売り主(破産者)は売却代金を受け取れません。
また、残ったローンは、自己破産して支払い義務を免れるため、ローンがいくら残るかということもあまり大きな意味を持たないのです。
不動産が高く売れるか否かで回収できるローンの金額が変わるため、不動産の売却にもっとも関心があるのは、ローン会社(あるいはローンを代位弁済した保証会社など)といえます。
自己破産の場合の不動産の売却方法・売却時期について、次のようなものがあります。
①任意売却:自己破産前に、抵当権者の同意を得ながら、本人(不動産仲介業者などを利用して)で売却する方法
②競売:自己破産の前後を問わず、抵当権者等が、裁判所の競売手続きで売却する方法
③管財人による換価処分:自己破産開始決定後に、管財人が売却する方法
いつまで住めるの?~引っ越しのタイミング~
住宅ローンの残った住宅を抱えて破産する場合の、破産者の一番の関心事は、いつまでこの住宅に住めるのか(いつ引っ越ししなければならないか)。住宅ローンの残った住宅を抱えて破産する場合に、必ずといっていいほど受ける質問です。
答えは、不動産が売却され、買い主から明け渡しを求められるまで、住むことができます。
そして、破産者に経済的に一番良い方法を考えるならば、できるだけ不動産が売却されず、長く住宅に住めるのが良いかもしれません。というのも、自己破産をする際は住宅ローンの返済を停止しますから、住宅ローンや家賃の負担なく、その住宅に住むことができるからです。自己破産が開始されると不動産の管理処分権は管財人が有することになりますが、所有権を失うわけではありません。不動産が売却されるまでは、所有権に基づいて不動産に居住することができるのです。
とても大切!!~引っ越しの準備~
以上のとおり、破産者は、不動産が売却されるまでは、住宅ローンや家賃の負担なく、その住宅に住むことができます。これは裏を返すと、不動産が売却されてしまえば、明け渡さなければならないということです。
不動産の売却方法や、破産者の経済状況等によっては、不動産売却代金から引っ越し費用が捻出される場合もありますが、これは実務上確立された方法ではありません。
いつ不動産が売却されてもいいように、住宅ローンや家賃の負担をせずに済んでいる間に、引っ越し先と引っ越し費用を確保しておきましょう。