自己破産の相談を受けていたところ、自己破産には時効がありますか?という質問を受け、少し驚きました。このような質問は、弁護士にはかえって思いつかない質問かもしれません。なぜなら、自己破産には時効がないからです。
ですが、この質問の意図はおそらく、自己破産の効果や影響がいつまで続くのかという点にあるのかと思います。
そこで、そういった自己破産の影響がいつからいつまで続くのか、自己破産した場合の効果や影響の及ぶ時期や期限について、考えてみます。
法律上の効果について
自己破産で法律上の効果が生じる時期は、基本的には、破産手続開始決定が裁判所から出されたときです。ここで生じる効果は、次のようなものがあります。
①破産者は、破産財団に属する財産の管理処分権を失う。
②債権者は、特別の定めがある場合を除いて、破産手続きによらない限り、権利行使できない。(強制執行などできなくなります。)
③破産者は、裁判所の許可を得なければ、居住地を離れならなくなる(居住制限)。
④破産者宛ての郵便物が破産管財人に配達されるようになる(通信の秘密の制限)。
⑤一定の職業・資格(警備員、保険の外交員、宅地建物取引主任者、後見人など)について、制限を受けることがある。
①破産者の財産管理処分権
破産財団に属する財産の管理処分権は、管財人が有することになります。管財人がそれらの財産を換価処分してしまうので、原則として、破産者の元に管理処分権が戻ることはありません。ですが、破産財産が自由財産と認められたり、管財人が破産財産を放棄すると、当該財産に対する管理処分権を再び破産者が有することになります。
この財産管理処分権に対する制限は、原則として、破産手続開始決定時点で、破産者が有していた財産にのみ生じます。したがって、破産開始決定後に、破産者が取得した財産は、このような制限を受けません。破産者は、破産開始決定後に得た財産については、蓄財したり消費したりと自由に管理処分することができるのです。
②の債権者への制限
②の債権者への制限は、破産手続き中続くことはもちろん、免責許可決定の確定により、非免責債権を除いて、破産者は債務の支払い義務を免れますので、以降ずっと債権者は権利行使できないことになります。
③居住制限、④通信の秘密の制限、⑤資格制限
破産者に生じている③居住制限と④通信の秘密の制限は、自己破産手続きの終了とともに終了します。
これに対しして、⑤資格制限は、通常は、破産免責許可が確定されると、制限が解除されます(復権といいます)。
事実上の効果について
自己破産をすることで生じる事実上の効果として代表的なものは、信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に事故情報が登録されることです。
ブラックリストに事故情報が登録されることにより、
・新たな借金ができなくなる
・クレジットカードが使えなくなる
・ローンが組めなくなる
など、生活への影響が出ることになります。では、このような効果はいつからいつまで続くのでしょうか?
【ブラックリストに載るタイミング】
弁護士に自己破産を依頼すると、弁護士が、債権者に対して、受任通知と呼ばれる通知を出します。その内容は弁護士によって異なるでしょうが、多くの場合は、弁護士からの受任通知が債権者に届いたときに、ブラックリストに載ることになります。
ただし、弁護士への依頼前に中長期にわたり返済を滞納している場合などは、すでにブラックリストに載っていることがあります。
【ブラックリストの保有期間】
ブラックリストと呼ばれる信用情報機関は、全国銀行個人信用情報センター(KSC)や株式会社 シー・アイ・シー(CIC)等複数あり、それらが一律の扱いをしているわけではありませんが、自己破産に関する情報の保有期間は、5年~10年と言われています。つまり、自己破産から5~10年経たないと、新たな借金やクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりはできないということになります。