相続人であっても、相続財産に関心がない、あるいは関わり合いたくない、などの理由で遺産相続を放棄される方がいます。
遺産相続を放棄する場合には、大まかには2つの方法があります。1つは、家庭裁判所に相続放棄の申述(申立て)を行う方法です。もう1つは、自分が取得する相続財産がないことなどを内容とする遺産分割協議書などに署名捺印して、印鑑証明書を提出する方法です。それぞれ意味合いが全く異なります。
1つ目の家庭裁判所への相続放棄申述(申立て)は、相続人たる地位そのものを放棄する手続です。したがって、相続放棄が正式に受理されると、法律上初めから相続人ではなかった扱いとなります。その結果、プラスの相続財産のみならず、借金などマイナスの財産の相続をすることもありません。また、配偶者や子どもなど第一順位の相続人が全て相続放棄をすると、親などの第二順位の方が相続人となります。
2つ目の遺産分割協議書などへの署名捺印は、相続人間で財産を分け合うための合意書です。したがって、自分が取得する財産がないことなどを内容とする協議書に署名捺印すれば、確定的にプラスの財産を取得することはできません。
しかしながら、借金などのマイナスの財産については、相続人間の合意で誰が引き継ぐかを合意したとしても、それはあくまで内輪の話であって、債権者の側からは法定相続分にしたがって請求を受けます。すなわち、対債権者では合意内容は意味をなさないということになります。
このように、それぞれ法律上の効果が異なる手続ですので、相続財産をもらわない相続人は、少しでもマイナスの財産が存在する可能性があるのであれば、家庭裁判所に相続放棄の申述(申立て)を行うことをお勧めします。
なお、この家庭裁判所に対する相続放棄の申述(申立て)は、原則として相続の開始を知ったときから3ヶ月以内とされていますので、不明な場合は早めに弁護士などの専門家に相談したほうがよいかと思います。
名古屋駅前の弁護士法人中部法律事務所では、相続放棄や遺産相続に関する相談は無料で行っていますので、お気軽にご相談ください。
(司法書士 尾﨑政友)