先日、名古屋の司法書士会開催の研修に参加してきました。研修内容は、業務の注意事項に関するものでした。
配布された資料をふんふんと一読していたのですが、懲戒事案をいろいろと読んでいると、「これはさすがに懲戒されても仕方ないな」というケースがさすがに多かったです。ただ、中には注意しなければいけない事案もありましたので、紹介したいと思います。
事案は、「死者からの委任状で、担保抹消登記を申請した」というものです。
司法書士には、いわゆる「人・モノ・意思の確認」が必要とされています。すなわち、当事者に会い、不動産を確認し、法律行為・登記申請の意思を確認しなければならない、というものです。
通常はこの3つの確認をするのは当然なのですが、住宅ローンの完済による抵当権抹消の場合は、銀行から本人(不動産の所有者)の委任状も含めた形で書類一式を渡されることがあります。その際、私は本人に対して最低限電話による確認を行いますが、中には報酬が1万円前後と安いことや、信頼してる銀行からの依頼ということで本人に意思確認をせずに申請をするケースもあるようです。懲戒の事案もそのようなケースでした。
問題となるのは、担保抹消登記の申請時点で、本人が死亡している場合です。この場合、後から当該不動産に相続登記が入ることにより、担保抹消の受付年月日と、相続登記の登記原因となる死亡日の先後により、担保抹消の際に本人が死んでいたことが登記記録上明らかとなります。
相続登記がいつ入るのかは、相続人がいつ手続をするかによりますが、5年後だろうと10年後だろうと、相続登記が入った時点で懲戒されるわけです。
住宅ローンの抹消登記は、登記手続きの中でも最も簡単な部類に入りますし、報酬も1万円前後と安いのですが、前述のようなリスクのある登記ですので、十分な本人確認を行う必要があります。
(司法書士 尾﨑政友)