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原本、謄本、抄本、正本の違い(平成25年7月24日)

 普段の生活で、「この書類は正本か謄本か」などと考えることはないと思います。しかしながら、法律関係の文書では、そのあたりは厳密に区別されていますので、整理してみたいと思います。

 

原本

 原本とは、文書作成者が一定の内容について、最初に作成した文書のことをいいます。例えば、契約をしたときに交わされた契約書そのもののことです。

 

謄本

 謄本とは、原本と完全に同じ内容の写しのことです。写しではありますが、裁判所書記官や法務局の登記官、市区町村長、公証人などが法律の規定に基づく権限によって、原本と内容が同じであることを証明すれば、原本または正本と同様に取り扱われます。

 

抄本

 抄本とは、原本の内容の一部の写しのことです。謄本との違いは、謄本が原本の内容の全部を写したものであるのに対し、抄本は原本の一部を写したものである点です。

 例えば、住民票の抄本を下さい、といえば、住民票の一部(どの部分が必要なのかは、申請人が指定します)が交付されます。一部事項証明書と同じ意味合いです。

 

正本

 正本とは、謄本の一種ですが、法律などに規定された権限に基づいて、正本として作成されたもののことです。判決正本、公正証書遺言の正本、などがこれにあたります。判決の原本や公正証書遺言の原本は裁判所や公証役場に保管されているため、判決の効力に基づいて強制執行をする場合や、遺言の執行をする場合に、正本が使用されます。

 

 登記実務では、公正証書遺言の内容を実現する場合は、公正証書遺言の正本を法務局に提出する必要があります。公正証書遺言を作成した場合には、原本を公証役場が保管し、正本と謄本が交付されます。

 

 この場合、正本は遺言執行の際に必要となることから、遺言執行者の定めがあれば遺言執行者が保管し、謄本は遺言者が保管しておくとよいかと思います。この場合の謄本は、遺言内容の確認のために交付されるものですので、遺言内容を実現する効力は法律上ありません。

 

 正本の場合、通常は文書の最後に、「これは正本である」などと記載がありますので、最後のページを確認してみるとよいでしょう。

 

(司法書士 尾﨑政友)

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