相続人の廃除とは、生前または遺言により、兄弟姉妹以外の推定相続人の、遺留分を含む相続権を剥奪する制度です。
兄弟姉妹が対象とならないのは、推定相続人が兄弟姉妹の場合には、遺言によって相続させないことが可能であるためです(兄弟姉妹には遺留分もありません)。
廃除事由としては、虐待や重大な侮辱、著しい非行があります。相続権の剥奪という重大な結果を伴うことから、相続人の廃除は家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所に廃除が相当であると認めてもらう必要があります。
相続人の廃除が認められると、戸籍の身分事項にその旨の記載がなされます。したがって、廃除されたかどうか(相続権の有無)は、戸籍をみればすぐにわかります。
では、実際に相続人の廃除の件数はどのくらいあるのでしょうか。以下に政府統計データを載せておきます。
●戸籍届出件数(相続人の廃除:全国)
平成23年度・・・31件
平成22年度・・・28件
平成21年度・・・47件
平成20年度・・・25件
これをみると、数としてはかなり少ないように思います。なお、死亡届は平成23年度でみると129万4493件もありますので、率で考えると僅かです。
厚生労働省の統計によると、高齢者の虐待件数のうち、養護者(世話をしている家族、親族、同居人等)による虐待の相談・通報件数は2万5315件あり、そのうち虐待であると判断された件数が1万6668件あります。本人との続柄でみると、息子が42.6%で最も多く、夫16.9%、娘15.6%と続きます。
ここでいう虐待が、直ちに相続人の廃除と認められるだけの虐待といえるかどうかは別として、相続人の廃除制度はあまり利用されていないといえるのではないでしょうか。
(司法書士 尾﨑政友)