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名古屋の弁護士コラム

戦略と戦術(平成25年7月3日)

 以前、とあるコンサルタント会社の研修に参加させていただいた際、印象に残った言葉があります。

 

「戦略の失敗は戦術では補えない」という言葉です。

 

 戦略とは、大局的な計画・判断であり、戦術とは、戦略を実現するための個々の作戦である。大まかには、このような理解でいいと思います。

 

 太平洋戦争当時、日本軍の2つの部隊が冬の山越えをしなければなりませんでした。一つの部隊長は、日本軍の力を信じ、大部隊を結成し、登山しました。一方、もう一つの部隊長は、地元の人間に道案内をさせ、小規模な部隊で挑みました。結果、大規模部隊は全滅し、一方の部隊は無事山越えに成功しました。

 

 これは実話ですが、戦略と戦術について示唆に富む話だと思います。2つの部隊において、個々の兵隊は同様に必死に努力して山越えをしようとしていたはずです。しかしながら、部隊長の戦略の違いにより、結果に違いが生じました。

こういった例は、ビジネスでもよくあることだと思います。

 

 例えば、ビデオの方式において、ソニーのベータ方式のほうが優れていたが、勝利したのはVHS方式だった、という話は有名です。性能の面でもサイズの面でもベータ方式が優れていたのですから、ハードという戦術面ではソニーが勝利していたわけです。

 

 しかし、ソフトウエアの品揃えと流通という点で、VHS陣営に遅れていたために、標準化の勝負に敗れた、ということがあります。つまり、ビデオにおいてはソフトの充実がハードの充実にも増して重要である、という戦略面での判断がまずかった、ということだと思います。

 

 同様に、ブルーレイとHD-DVDの争いにおいても、製造コスト面においてはHD-DVD陣営が勝利していたのですが、どんどん高画質化する映像を収録するには、記録容量が決定的に重要である、という戦略面での判断の欠如ないし軽視が、東芝陣営の敗因の大きな要因だったと言われています。

 

 士業(サムライ業)においても、今後ますます戦略の重要性が高まっていくのだと思います。そもそも、日本の士業制度は依頼者のニーズとは関係のない制度です。依頼者からすれば、依頼した案件を適正な価格できちんと処理してくれさえすれば、依頼先が士業ではなく株式会社であってもいいはずです。

 

 そのような時代が来るかどうかは分かりませんが、士業は依頼者のニーズに応えるサービス業だという視点を忘れずに、より良いサービスを追求していきたいと思います。

 

(司法書士 尾﨑政友)

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